《鉄機の行方》■武者○伝 [小説]
武者○伝の武者丸と斗機丸で、書いてみた。
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別に腐女子向きってわけじゃないけど、続きをクリックにしてみる。
《鉄機の行方》■武者○伝
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ゴウゴウと空気がうねる。無理矢理かき回された空間が恐ろしく不安定な力場を作り出し、磁場とごたまぜに荒れ狂う。
明らかに方向性を持つパワーが傍若無人に町を破壊しはじめる。
「…何を言っている?」
その場から逃げだそうとする人々とは逆に、力場の中心へと向かう一団がいる。
武器を携え、この町の人々を救いにきたはずなのに、その中に小さな諍いが起こっている。
小柄でスマートな武者が、ずっしりと猛々しい白い武者を非難している。そちらの大柄な武者に非があるのは、大きな体をいくぶん丸め、小さくなっているところから見て取れる。
「お前が我致止飛を使うときは、天宮が亡びそうな大事件の時のはずなんだ!」
この大柄な武者、武者丸のわがままは今に始まったことでもない。
進言の端々にも己の言葉の自信のなさは現れていて、意見のぶつけ合いと言うよりは、駄々をこねているというような風にしか見えない。
「馬鹿か貴様!!福岡が亡びても充分大事件だろうが!」
斗機丸が焦りも露わに大喝する。
「そんなこたぁわかってる!…くそう!」
最後に絞り出した悪態に、武者丸自身もこの状況がよくわかっていることを示している。
だが、やはり、納得がいかないのだ。我致止飛が発動すれば、目の前の友は死ぬ。たとえ、彼が鉄機で工房で製作されたものだとしても、その複雑な思考ルーチンはもはや彼独特のものであったし、人工頭脳のコンセプトも絶妙なデータやメモリの構築で生まれた奇跡の産物で、応用も複製も面倒なからくりだった。
量産ができないために、プロトタイプである彼、唯一人が製作され、生産ラインは構築されなかった。
鉄機でありながら、破壊されれば彼は死んでしまうのだ。
「散り際を見誤らんと豪語したのは、貴様だぞ!」
「だっ…黙れ!このエエかっこしい武者!!」
それでも武者丸の目をのぞき込んだ斗機丸は、安心するように微かにちらりと笑った。
「あとを頼んだぞ!」
「斗機丸!!」
その気になれば、武者丸は力ずくで留めることができる。だが、そうしない、できない。それがうれしくて、つらくて、必ずこの町を救うと強く思った。
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